政府専用機のこと

1999年から2003年にかけて、政府専用機の部隊の整備部門で勤務してました


政府専用機は航空自衛隊が運用していて、その部隊は北海道の千歳空港にあります

機体は2機、任務運航時は陛下や総理が搭乗する機体が任務機、そして万が一のために予備機としてもう1機がついて回ることになります

コールサインは通常の訓練では『シグナス(白鳥)』ですが、羽田で総理が乗機すると『Japanese AIRFORCE ONE(ジャパニーズ エアフォース ワン)』になります

そして離着陸の優先順位も1番になるので、羽田空港の離陸順番待ちの飛行機大渋滞をぶっちぎって一番先頭に横入りする時は快感です(笑)


運航に関わる乗務員は全て航空自衛官(パイロット、客室乗務員、整備、通信、警備)

任務運航の際には、総理夫妻、随行員、SP、メデイアの記者が搭乗します

寄港する各国の空港には日本航空(JAL)のスタッフが先行していて、運航に関わるほぼ全ての業務の準備を完璧に整えてくれているので安心して任務遂行に専念できました

日本航空の全世界へのネットワークのすごさを実感した次第です

今後あの業務を全日空がやる事になるんですね・・・


公用パスポートの入国のハンコを数えると21か国に入国したことになっています

(それでも隊員としては少ないほう)

が、整備は到着してからが仕事なので空港とホテルの往復のみという国も多く、ホテルでシャワー浴びただけの国や、時には機体に泊まりこみの空港もあった(極寒の空港で屋外駐機の場合、機内の水タンクが凍る可能性があるので機体を温め続けなければならない)りして、ちゃんとその国に訪れたという感じがしない国も多々ありますね


まぁとにかくいろんな経験をさせてもらいました

総理の海外訪問の情報は正規ルートよりもTVニュースや日本航空からの方が早かったりします・・・

所詮日本の危機管理はそんなものです


メカニックとしての危機管理とセンスも養われます

このトラブルで機体を飛ばせるのか?飛ばせないのか?

寄港地では時に究極の選択を迫られます

特に出発前は秒単位で時間管理されるので悩む時間はありません

トラブルの際に急遽機内で開かれる会議では全員の視線が自分に集まります

冷静に頭の中で知識と経験をフル動員して整備サイドとしての判断を意見具申する必要があります(最終決定は指揮官がします)

国務が無事に遂行されるかどうかに関わるので重大?な感じがしますが、そんな気持ちはほぼ感じなくて、ただメカニックとして機体の安全のみを判断することに集中していました

全て良い経験でした

そして政府専用機を最後に自衛隊を辞めて心底メカニックとして飛行機だけに向き合うために長崎にあるパイロット養成校であった「エアフライトジャパン」(のちに日本航空の事実上の倒産により同社も倒産)へ入社して、セスナ172に始まる小型機の世界にどっぷりとハマっていくのでした

戦後まもなくならともかく、今の時代で「戦闘機」「大型旅客機」「小型旅客機(ターボプロップ)」「レシプロ(ピストンエンジン)小型機」と、グライダーやヘリコプタ以外の航空機ほぼ全ての整備経験のあるメカニックは国内で自分だけではないかと思います・・・たぶん


ついにB747の政府専用機が退役しました
また新しい機体で新しい歴史が始まります

これからも事故無く、淡々と安全運航で任務を遂行されることでしょう

いつの日か誰かが思い出話を本にする日も近いのではないかと思います

政府専用機に関する数々の裏話は、ここで書くことができませんので直接私に聞いてくださいね


rakuencoffee

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